【江差町】郷土資料館(No.067-1)

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 色々と更新のペースが遅くなっている為、施設の情報とか施設の概要のみご案内している場合があります。詳しくはお知らせをご覧下さい。

 博物館とか資料館とか記念館とか巡りが大好きな中の人がお送りする、地元北海道内の博物館とか行ったメモ。
 第六十七回目の一回目は「江差(えさし)町郷土資料館」です。
 因みに今回は二本立てとなっており、二回目は本施設の近くに位置する江差町旧江差駅資料展示館です。

 以前にも書いた様な気がしますが、北海道には枝幸(えさし)と江差(えさし)の2つの「えさし」があり、今回は道南の方の「えさし(江差)」となります。道北の方の「えさし(枝幸)」には枝幸町オホーツクミュージアムえさしがありますので、こちらも是非どうぞ。
 それにしても来館時はすこぶる晴れており、中の人の普段の行いがアレだからでしょうかね。でも、あちこち巡っていますけどあんまり雨に降られた事が少ないんですよね。やっぱり普段の行いかしら?
 晴れた日の建物も鮮やかで素敵ですが、夜になるとライトアップされるそうですよ。

施設情報

施設名:江差町郷土資料館(旧檜山爾志郡役所)
場所:〒043-0034 北海道檜山郡江差町中歌町112
URL:https://www.hokkaido-esashi.jp/museum/top.htm
休館日:月曜日
開館時間:9:00~17:00
料金:300円
必要見学時間:40分

施設概略

  • 1Fは北海道指定有形文化財の本施設そのものについて展示されています。
  • 2Fは江差町の概要、歴史、文化、日本遺産に関して展示されています。
  • 施設の隣に復元された留置場があります。
  • 不定期ですが企画展も開催されるそうです。

 この「江差八勝」とは、江差の8ヶ所の絶景を8名の文人がそれぞれ漢詩で称えた事を記念して建立された石碑との事で、詳しくは江差町の観光ポータルサイト(https://esashi.town/tourism/page.php?id=81)をご覧下さい。
 因みに「八勝」の「勝」は「かつ」ではなく「まさる」とか「すぐれる」とかの意味です。なので絶景の場所を景勝地とか名勝地とか言うんですね。おっとうっかり無駄知識が。

 これは本施設の敷地内に植えられている「土方歳三・嘆きの松」と呼ばれる松で、旧幕府軍の軍艦である開陽丸が江差沖で座礁・沈没した際に土方歳三がそれを嘆いて松の木を叩いたところ、後日に瘤が出来てそこから曲がってしまった伝説が残されているそうです。凄ぇな歳三。
 尚、開陽丸に関しては近くに開陽丸記念館があるのですが館内の写真撮影は事前に申し込みをしなければならないとの事でして、正直そこまでするのも面倒なので行ってません。

1F

 パノラマ撮影したった!(クリックで大きくなります)

ホール展示

 本施設は、元々は明治20年(1887年)に檜山(ひやま)郡と爾志(にし)郡の管理・管轄を行う為の「檜山爾志郡役所」として建設されたそうで、1Fは警察署、2Fを役所として運用されていたとの事でした。
 その後、檜山支庁庁舎→江差警察署→江差郵便局の仮庁舎→江差町役場の分庁舎と用途を変えながらも長く使われ続けた結果、北海道内で現存する唯一の郡役所庁舎となった為に北海道の有形文化財に指定されて現在では郷土資料館になっています。
 途中途中で若干の改修工事が行われたそうですが、平成8年(1996年)から始まった2年に及ぶ保存修理で現在の建物は建設当時の状態に復元されたそうです。

 調査時に12種類のクロスが壁や天井に貼られていたそうで、その内の7種類を復元されたそうです。瓢箪から駒はまぁ良いとして、出来れば他のも復元して欲しかったなーと個人的には思います。とは言え、何らかの理由があったのでしょうね。特に理由は明記されていませんでしたが、痛んだら都度の張り替えが行われていたそうですので、建設当初のクロスのみを復元したのかも知れません。

 こんな感じです。天井は「市松華文」で壁は「菊華文」でした。勿論、部屋によって柄が異なりますので雰囲気も異なります。

 手錠に繋がれた人が発見されなくて何より。

 平成5年(1993年)から建物が使用されなくなったそうで、写真では平成7年に発生して奥尻(おくしり)島を中心として甚大な被害が出た北海道南西沖地震の影響(江差は震度5)で2つの煙突が抜け落ちてしまっています。

 こちらが現在の状態と同じ、建設当時の模型です。上の写真では無かったバルコニーが復元されています。

 バルコニーに出られるのでパノラマ撮影したった!(クリックで大きくなります)
 なんでこんな景色が眺められるのに撤去して部屋にしちゃったんでしょうかね。そんなに広いスペースを確保出来ないんですけどね・・・。窓際族用かしら?
 ※参考動画

 あ、本施設はこの様に高台に位置してます。なので見晴らしが良いんです。

 本施設の当時の上棟式の様子を再現した1/20スケールの模型でした。和風建築とは異なる洋風建築で、太い柱ではなく細い柱をふんだんに利用した構造になっています。

 犬も様子見しに来たみたいです。

展示室2

 展示ホールに続く隣の展示室2では、本施設の修復に至る経緯から実際の各作業工程について詳しく説明されていました。
 写真中央は屋根部分のカットモデルです。洋風建築なのに瓦。和洋折衷ですね。因みに、北海道を含めた降雪地域では屋根の雪降ろしの時に瓦まで落ちちゃうらしいので瓦屋根って少ないんですよね。

 檜山爾志(ひやまにし)郡役所の修復に至る経緯として、平成4年(1992年)に北海道有形文化財に指定された本建物について、北海道大学工学部の教授が調査を行い建物を復元して郷土資料館として蘇らせる提言をされたそうです。その後、平成8年(1996年)から補修工事が行われて2年後の平成10年に完了したとの事でした。
 北海道に限らずですが、予算が潤沢にあれば朽ち果てずに済んだ建物が多いのでしょうね・・・。

 こちらは工事の様子です。建物をジャッキアップして基礎工事を行ったそうですが、このジャッキアップ工事を「揚屋(あげや)」工事と呼ぶそうです。揚屋と言うと吉原の遊郭とかしか思い浮かばないんですが、それとは全く異なります。

 ホール展示でも登場したクロスの復元の様子です。一般的にビニールクロスが「クロス」と呼ばれていますが、本来は布製なんですって。確かに「cloth=布」ですもんね。本施設では年代的にも布クロスが使用されていたそうで、調査時に発見されたクロスを科学分析し職人さんが一色ずつ手染めしているそうです。尚、施工がビニールクロスよりも難しいらしいです。
 冗長になるので写真は掲載していませんが、クロスの他にも骨組みや壁、天井の飾り等々が職人さんによって復元されていました。

映像室

 休止中でした(´·ω·`)

展示室4

 映像室の隣にはおっさんが居ました。特に説明が無かったので何の部屋なのかは知りませんが、ここから隣の留置場へと繋がっています。取調室かしら。
 ところで、展示室1と展示室3が見当たらないんですけど何処に行ったのかご存知ありませんか? 展示室1が無いのはホール展示かなーとは思うんですが。映像室が展示室3なんですかね。見落とす事はしないんですが・・・。

 難しい顔して何を読んでいるのかと思えば・・・。尚、これに関しては展示室6で説明がされていました。

階段

 勿論、階段も修復されています。
 和風建築では直角に曲がる階段が多く作られていた為に当時の職人さん達は西洋風の緩やかなカーブを描く階段は不慣れだったとの事で、試行錯誤しながら製作されたそうです。

 ステップ部分の色が違う部位は、長年の使用で磨り減った部分を判り易くする為にあえて色の違う樹脂で修復したそうです。ここまで減るものなんですね。
 尚、減っている場所が外側に偏っているのは、カーブ部分の内側のステップの奥行きが狭く足の踏み場が無いからです。足を滑らせてドリフ並みに落ちた人が居たと思います。

2F

展示室5

 2Fでは江差町の自然・歴史・文化が展示されていました。この展示室5は広々としているんですけど、箱館戦争とか掘り下げたりまだまだ展示する内容がある筈なんですよね・・・。今後に期待です。

 入ってすぐは江差町の自然とか地質とかの概要で、ここでは海綿の仲間の化石が展示されていました。中の人の海綿のイメージとは異なる形状でしたが、飽くまでも海綿の「仲間」なので已む無し。

 縄文時代の展示です。江差町内では64箇所に上る遺跡が確認されているそうで、その大半が縄文時代の遺跡なんですって。とは言え、続縄文時代とか擦文時代とかの土器も展示されています。

 比較的に最近のコーナーで、鎌倉時代から江戸時代までの江差についてでした。
 左下の勝山館(かつやまだて)と泊館(とまりだて)とは山城で、泊館は江差町、勝山館は隣の上ノ国(かみのくに)町にあったそうです。勝山館については上ノ国町勝山館跡ガイダンス施設が本施設の近くにありますので是非どうぞ(本はらわたでは春頃にご案内予定です)。

 戊辰戦争の最後の戦争となった箱館戦争の概要とか。
 近くの厚沢部町郷土資料館でも箱館戦争が取り上げられていますが、ここ道南方面の博物館とか資料館とかには箱館戦争関連のコーナーがたくさんあります。そう考えると箱館戦争専門の資料館とかあった方が良いと思うんですよね。箱館戦争関連の情報が細かく分散されておりその土地に関連する部分がフューチャーされているので、出来れば一つに纏めた感じの資料館を是非。
 当はらわたで箱館戦争についてのページを作るのもアリかも知れませんね。道南方面の博物館とか資料館とか全て観覧してからなので来年かなー・・・。箱館戦争だけじゃなくて松浦武四郎氏とかの情報も全道に分散しているので、こちらも纏めたいです(意気込みとして)。

 衣食住のコーナーです。
 左側の卵焼きパンみたいなのはカマボコ焼きパンで、江差町ではホッケのすり身を使用したカマボコが今でも当時の手法で製造されているそうです。
 詳しくは渡島総合振興局>商工労働観光課(http://www.oshima.pref.hokkaido.lg.jp/ss/srk/shokusai/b01/b01010.htm)をご覧下さい。他には集まれ!北海道の学芸員>コラムリレー(http://www.hk-curators.jp/archives/1920)でも詳しく説明されています。このコラムリレーが個人的に興味深く、学芸員の方々の取り組みやその大変さが解る貴重な内容になっています。皆さんも感謝して観覧しましょう。

 北前船(きたまえぶね)に関するコーナーです。北前船とは各地で買い集めた商品を各地で売買する交易船の総称で、本州の商品を北海道で販売したり、その帰りに北海道の商品を買い集めて本州で販売したりと、行きも帰りも売り上げがあるステキな商いです。
 特に道南方面では高田屋嘉兵衛氏が有名で、函館市北方歴史資料館で詳しく紹介されていました(残念ながら2013年に閉館)。こっそり観覧出来ないかな・・・。兵庫県に高田屋嘉兵衛氏の資料館があるのですが、流石にそこまで見に行けないですし・・・。北方歴史資料館の資料を死蔵するのは極めて惜しいので、何処かで展示してくれませんかね。
 尚、展示されている羽織は鹿の皮製なんですって。それと手前の巻物は旧幕府軍のリーダーでった榎本武揚氏の手紙との事でした。何が書かれているのかはさっぱり解りません。

 江差町で使用されていた(されている)家印です。家紋と屋号の融合みたいな存在で、当時は一般庶民には苗字が無かった為にこの家印で差別化を図っていたそうです。今でも町内で使用されており、このコーナーではクイズが出題されていました。正解は・・・越後製菓!
 ※参考動画

 こちらは姥神(うばがみ)大神宮の祭礼の際に使用される山車の模型です。姥神大神宮には展示室6で登場する折居(おりい)さんが祀られているそうです。詳しくは江差町の観光情報ポータルサイト(https://esashi.town/matsuri/page.php?id=17)をご覧下さい。お祭りは例年8月に開催されているそうです。

 道南方面の伝統芸能である鹿子舞(ししまい)の被り物です。本来は獅子舞なのですが、北海道では鹿子舞と言う漢字になっています。まぁ北海道には鹿は居てもライオンは居ませんからね(本州にもライオンは居ない)。

 江差町を中心とした各地の鹿子舞の分布図です。厚沢部町郷土資料館でも鹿子舞が展示されていました。

 五勝手屋鹿子舞→田沢鹿子舞→土場鹿子舞の映像がループで放映されていました。やっぱりそれぞれ違うんですよね。

展示室6

 江差町は文化財が多く、特にこの展示室では日本遺産に認定されたニシン関係の展示がされていました。
 日本遺産については文化庁の日本遺産について(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/nihon_isan/)をご覧下さい。特に北海道の日本遺産については北海道教育委員会の日本遺産について(http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/bnh/japan-heritage.htm)をご覧下さい。本州と比べると歴史が浅いかも知れませんが、離島故の独自の魅力がありますよ。
 因みに、江差の日本遺産のタイトルに「江差の五月は江戸にもない」となっていますが、江戸に江差がある訳がないとかそう言う大人気ない意味ではなく、ニシン漁で賑わう春先の江差は常に賑わっている江戸を凌ぐ賑わいと言う意味です。

 先に登場した各種屋号が刻印された道具類です。北海道では江差町だけではなく特に日本海側沿岸地域ではニシン漁が盛んで、当はらわたでもちょいちょい登場しています。関連記事はニシン漁からどうぞ。

 民謡の「江差追分」を始めとして音頭や鹿子舞(ししまい)が「北海道指定無形民俗文化財」に登録されています。そう言えば全く関係ありませんけど、北海道には追分町がありましたがいつの間にか早来(はやきた)町と合併して安平(あびら)町になってました。
 手前の絵は「折居(おりい)伝説」を描いた絵画との事で、折居さんと呼ばれるお婆さんがニシンをもたらしたそうです。詳しくは江差町の観光ポータルサイト(https://esashi.town/tourism/page.php?id=101)をご覧下さい。
 ※参考動画

 こちらは「松前屏風・江差之図」と呼ばれる北海道指定有形文化財の複製です。松前城下の様子や当時の生活が描かれているそうです。函館市中央図書館デジタル資料館(http://archives.c.fun.ac.jp/fronts/detail/scrollframe/57eb64041a557206c0000008)で、もっと鮮明な写真が閲覧出来ます。

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